不動産オーナー向け|法人で本当に使える節税術5選【現金を残すための現実的手法】

不動産

「節税=裏技」ではありません。使える制度だけに絞って解説します。

節税に関心を持つのは、「税金がもったいない」と感じるから。
これは多くの不動産オーナーに共通する、ごく自然な感情だと思います。

ただ、実際に不動産賃貸業を法人で運営するなかで実感するのは、節税に“裏技”のような近道は存在しないということです。

利益が出れば、税金は必ず発生します。
それを避けることはできませんし、税金を減らせば当然、利益も現金も減るというのが現実です。

だからこそ私は、
「無理な支出を伴わず、実務として意味のある節税策だけを選ぶ」
という方針で法人経営を行っています。

不動産賃貸業は不動産が富を運ぶ「資産を守る事業」です。
その資産を守るには、潰れずに継続できる体制=現金の余裕が不可欠です。

この記事では、私自身が実際に活用している、法人経営において本当に有効な節税策を5つご紹介します。

① 倒産防止共済

倒産防止共済(正式名称:経営セーフティ共済)は、いわゆる“積立式の節税制度”です。掛金は法人の損金(=経費扱い)にできます。

この制度のいいところは、支払った掛金が経費になりながらも、実際にはお金が共済に積み立てられていくこと。つまり、現金を帳簿外に移しながら積み立てていける点が最大のメリットです。

掛金は月5,000円から20万円まで自由に選べて、合計で800万円まで積み立て可能。さらに、40ヶ月以上払えば元本割れせずに全額戻ってきます

ただし、解約するとその受取額は益金(=収益)として計上されます。
つまり、解約したお金はまるまる利益となるので、修繕費や売却損などの経費とぶつけて相殺することが非常に重要です。

特に不動産賃貸業では、突発的な修繕や大規模改修でまとまった支出が発生することもあるため、こうした費用とタイミングを合わせやすい倒産防止共済は非常に相性が良い制度だと感じています。

保険商品と違って出口の見通しが立ちやすく、再加入もできる。実務で本当に使える制度です。


② 役員社宅制度

役員社宅は、不動産オーナーが法人で住居を借り、一部を個人負担・残りを法人の経費にできる制度です。
家賃補助と違って課税対象にならず、実質的に手取りを増やすのと同じ効果があります。

特に「1人社長」が多い不動産オーナーにとっては、非常に相性が良い制度です。

使用料相当額の算出には、以下のような計算式(年額)が用いられます:

  • 建物の固定資産税評価額 × 0.2%
  • 12円 ×(床面積㎡ ÷ 3.3 × 12)
  • 土地の固定資産税評価額 × 0.22%

これらを合計した金額が「使用料相当額(年額)」となります。

  • 予定賃料 − 使用料相当額 = 法人の経費計上額
  • 使用料相当額は役員が個人で負担する必要があります。

※共用部分の按分や物件評価額の確認など、細かい判断が必要なため、実際の適用にあたっては税理士と相談することをおすすめします。

自社物件の空室を社宅として活用することもでき、不動産賃貸業との相性は抜群です。


③ 修繕費の計上タイミング

建物は必ず劣化します。だからこそ、修繕は必要不可欠な支出であり、法人経営において避けて通れない項目です。

この修繕費は、「どのタイミングで計上するか」によって、利益や納税額に与える影響が大きく変わります。

利益が多く出た年にあわせて修繕を実施すれば、支払う税金を抑えられます。
逆に赤字の年に多額の修繕をしても、節税効果は限定的です。

不動産業は修繕の計画を立てやすい事業でもあります。年度ごとの利益を見ながら柔軟に対応しましょう。

なお、「資本的支出」とされる工事は資産計上され、減価償却の対象となるため注意が必要です。


④ 家事按分の活用

法人経営では、本来、事業用と私用の支出は明確に分けるのが原則です。
ただし不動産賃貸業のように小規模な運営では、支出が混在しがちです。

その場合でも、実際の使用割合に基づいて合理的に按分すれば、法人経費として処理することが可能です。

例としては:

  • ネット回線:50〜70%按分も可
  • スマホ代:通話明細で業務通話分を按分
  • 車両費:物件巡回・銀行訪問などの走行記録に基づき按分
  • 電気代:使用部屋の面積や時間に応じて按分

不動産業は自宅での作業や打合せも成立しやすく、個別の事務所がなくても業務が回せる業態です。

按分の根拠を残しておけば、正式に認められる処理として有効活用できます。


⑤ 非常勤役員制度の活用

親などの家族を非常勤役員として登用することで、いくつかの節税メリットを得ることができます。

非常勤役員であれば、報酬額や勤務実態によっては社会保険の加入義務を回避できる可能性があり、法人側の負担軽減にもつながります。

また、将来的に退職金を支給することで、退職所得控除の活用が可能です。
生前贈与と組み合わせれば、資産移転の一環としても使える手法となります。

もちろん、名ばかりの役員では認められません。
議事録の整備や、実際の関与が必須です。

家族経営が多い不動産法人にとっては、自然な形で資金と税務のバランスをとれる実務的な節税策です。

まとめ|節税の目的は「事業を潰さず現金を残すこと」

今回ご紹介した制度はいずれも、

  • 実務上も活用されていて
  • 税務的にも正当に認められたものばかりです。

節税というと、どうしても「税金を払わずに済ます方法」に目が向きがちですが、
本当に重要なのは、手元に現金を残し、事業を潰さず継続していくことです。

その観点で考えると、使うべき制度は自然と絞られてきます。

  • 無理な支出をしない
  • 長期的に見て損をしない
  • 将来的な出口が見える

そういった制度だけを選び、適切に活用する。
これが私自身が実践している「現実的な節税」の考え方です。

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