出口戦略に正解はある?
不動産投資の出口戦略に「唯一の正解」はありません。
なぜなら、投資家の目標・資金状況・物件の立地や築年数・金融機関の融資条件によって、最適な選択肢は変わるからです。
ただし、多くの投資家が取る戦略は大きく3つに分けられます。
- 売却する
- 長期保有(持ち切る)
- 建て替える
それぞれの特徴と判断ポイントを整理していきます。
出口戦略① 売却
売却は「キャッシュ化できる」という点で魅力があります。
特に築浅〜中程度の物件であれば金融機関の融資がつきやすく、買い手も多いため市場での流動性が高いです。
- 築浅〜中の物件
- 融資がつきやすく、サラリーマン投資家や法人も購入しやすい
- 売却市場が広く、相場に近い価格で売れる可能性が高い
- 築古の物件
- 融資がつきづらく、キャッシュが捻出可能な投資家に限られる
- 富裕層や法人が現金で購入するケースはあるが、市場は狭い
税制面の注意点
売却益にかかる税金は、個人と法人で大きく異なります。
- 個人の場合(譲渡所得課税)
- 5年以下の保有 → 短期譲渡所得として約39%課税
- 5年超の保有 → 長期譲渡所得として約20%課税
- 長く持ってから売却した方が税負担は軽くなります
- 法人の場合(通常の法人税課税)
- 売却益は譲渡所得ではなく「法人の利益」として扱われる
- 短期・長期の区分はなく、一律で法人税率が適用
- 中小企業なら15〜23%程度の法人税(所得額によって変動)
👉 個人で売却するのか、法人で売却するのかによって、手取り額が大きく変わるので要注意です。
出口戦略② 長期保有(持ち切り)
「ボロボロになるまで持ち切る」というのも現実的な戦略のひとつです。
- ローン完済後
- 家賃収入はそのまま純利益
- 将来の生活基盤にもなる
- 減価償却後
- 経費計上は減るが、キャッシュフローは増える
- 注意点
- 修繕費(大規模修繕・外壁・設備交換など)の負担が大きくなる
- 築古になると稼働率が下がる可能性がある
👉 長期保有は「立地が良く、賃貸需要が安定している」物件で特に有効です。
出口戦略③ 建て替え
古くなった物件を取り壊し、新築する戦略です。
- 容積率を活用
- 容積率を使い切っていない土地なら、建替えで戸数を増やせる
- 賃料収入を大幅に増やせる(場合によっては最大4倍)
- 減価償却のリセット
- 新築することで再び減価償却を活用でき、節税(数十年の再繰延)にもなる
- 出口の柔軟性
- 建替えた後に「新築物件として売却」することも可能
👉 建設費や融資条件に左右されるため、慎重な検討が必要ですが、立地が良ければ大きなリターンが見込めます。
築年数ごとの出口戦略の目安(耐用年数22年の木造例)
築年数 | 融資のつきやすさ | 主な買い手 | 出口戦略の目安 |
---|---|---|---|
〜10年 | ◎(融資がフルに出やすい) | サラリーマン投資家、法人 | 売却しやすい/保有継続 |
11〜20年 | ○(残存耐用年数による) | サラリーマン投資家、信金 | 売却 or 保有 |
21〜30年 | △(融資は短め) | 信金・一部ノンバンク | 立地次第で売却 or 保有/建替え |
31年以上 | ×(ほぼ現金) | 富裕層・法人、建替可能な業者等 | 持ち切り or 建替え→減価償却リセット後に売却 |
構造ごとの耐用年数の違い
構造 | 法定耐用年数 |
---|---|
木造(非耐火) | 22年 |
木造(省令準耐火) | 35年 |
軽量鉄骨(厚さ3mm以下) | 19年 |
軽量鉄骨(3〜4mm) | 27年 |
重量鉄骨(4mm超) | 34年 |
RC造 | 47年 |
👉 耐用年数はあくまで目安であり、実際の融資年数は金融機関の判断によります。
私の出口戦略の考え方
出口戦略は人によって異なり、正解はありません。
私自身は、将来的にキャッシュも重視したいと考えているので、次のような基準で考えています。
- 収益が良く、土地価格も値上がりする場所
→ 基本的には立地を吟味して購入しているため、持ち切り前提で保有。安定収入を確保しつつ、資産価値の伸びも狙います。 - 良い立地でも「よほど良い値段で売れる」ケース
→ 利益を先取りするために売却を検討。キャッシュを残すのも大事な選択肢です。 - 微妙な立地や融資がつかない築古物件
→ 1等地ではないがニーズがある場所や、建て替えを行うことで需要を満たせる物件については、無理に売らず、持ち切りか建替えで減価償却をリセットして再スタートし、建替え後に売却検討。
まとめ|出口は「買う前から考える」ことが大切
不動産投資の出口戦略は、売却・長期保有・建て替えの3つが代表的です。
どれを選ぶかは、立地・築年数・構造・資金状況で変わります。
出口戦略に唯一の正解はありません。
大切なのは、物件を購入する時点で出口のシナリオを想定しておくことです。
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